戦争は知らないけれど

戦争は知らないけれど

「あなたの〈戦争体験〉を聞かせてください。戦争を感じた体験はありませんか?」
という問いを、1945年8月15日以降に生まれたいろいろな世代の人に投げかけてみた。

なぜそのようなことをしようと思ったのか。
それは、元日本兵から日中戦争最中に自らが犯した加害の残虐行為の話を聞かせてもらったときの体験から始まっている。
目の前にいる人が語るその内容にショックを受けながら、もしこの話を子どもに虐待をしてしまっている親が聞けたなら、救われるかもしれないと思ったのだ。それは私自身が子育てをする中で味わった体験が、何かしらリンクしてのことだったのだと思う。
「戦争」とか「平和」とか大きな括りではなく、「あなたの戦争体験」という問いから始めたい。一見つながってないものをつなげたいと思った。

すぐには出てこない話をゆっくり聞いていると、その人の存在感は増してくる。そして話を共有している自分も、ここにいるということを感じる。
そんなインタビューを重ねるうちに、人の話をゆっくり聞くということは、「戦争」と対局にある行為のように思えてくるのだった。

2019
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